2016年12月24日土曜日

怒涛のコアプログラムについて

こんにちは、Class of 2018Y.Yです。妻と2人の娘(3才・0才)と一緒に留学中で、現在、1年生の最初の1学期が終わったところです。

受験生の皆さんは2nd Roundのアプライに向けて大変お忙しい時期かと思います。とはいえ体が資本ですので体調にはよく気をつけながら乗り切ってくださいね。

今回はKelleyの一つの特色であり、大きな試練でもある「コア」科目(Integrated Core)についてご紹介したいと思います。このブログの中でも、過去にコアについては何度となく紹介されていますので、今回は最新状況と特に個人的な体験談の部分に焦点を当ててご紹介します。


KelleyでのMBA生活は、一般的にはIEPJump Start、そしてMe, Inc. から始まり、その後コア期間が始まります。前者の3つについてはJ.Kさんが詳しく書いてくれていますので、こちらをご参照ください。

いきなりのケースコンペティションと英語の壁

さて、Kelleyでは、Me, Inc.からコアの期間にかけて、J.Lさんがこちら(Kelleyの魅力〜コラボレーション〜)で詳しく書いてくれている通り、5人編成のチームで様々な課題やディスカッションに取り組むことになります。私のチームはアメリカ人3人と、ブラジル人留学生1人、そして私という構成でした。このメンバーで最初に取り組む大きな課題が、Me, Inc.の最後にある、いきなりのケースコンペティションでした。
お題は、地元のフードトラック(トラックで提供する屋台ビジネス)であるThe Big Cheezeの成長戦略を提案するというもの。そしてこのグループワークのディスカッションで、いかに自分が英語でのコミュニケーションができないか、ということを突きつけられることになりました。特に、ネイティブスピーカー同士がアイディアを言い合うような場面になると、そもそも何について話しているのかさえ全く分からなくなり、苦笑を浮かべながらただそこにいるだけ、という時間が延々と続くことになりました。最終的な成果物でも、パワーポイント1枚分程度しか貢献することができませんでした。これはものすごく恥ずかしく苦痛な経験でしたが、最初に自分の現在位置を知り、登るべき壁の高さを知るという意味では本当に良い経験になりました。後述しますが、コアの最後にはもう一度ケースコンペがあり、そこで自分とチームがどのくらい成長したのかを知ることができるようになっていますので、そこでのリベンジを目標に、コア期間を通じてハードスキル(知識)・ソフトスキル(英語でのコミュニケーション力)共に向上を目指すこととなりました。


綿密に計画された怒涛のコア科目(宿題、宿題、宿題、試験、試験!)

ケースコンペが終わると、いよいよコアの授業が始まります。1年生の最初の秋学期は、選択科目は一切なく、全員が同じコア科目を受講することになっており、一通りの経営のハードスキルを学ぶことができます。具体的には8つの科目(後述)から成り立っており、事前の教授間での綿密な調整のもとうまく連携し合いながら授業が進んでいきます。これにより、必要な知識が効果的な順番で身につけられるだけでなく、各教科がそれぞれ実際のビジネスにおいては独立したものではなく互いに関連したものであるという理解が促進されるようになっています。別々の教科の教授が合同で授業を行ったり、一つのケーススタディをマーケティング・オペレーション・ファイナンスのそれぞれの授業で別々の角度から扱うなど、毎回様々な趣向が凝らされていたのが印象的でした。

さてこのコア科目、学生の負荷が過度に集中しないように宿題や試験勉強が平準化されているのですが、常に相当な高負荷で維持されているため、ほとんど息つく間もなく勉強漬けの毎日になります。一つの学期は大きく前半の7週間と後半の7週間に分かれるのですが、いずれの科目も通常であれば1学期丸々かけて学習するような内容を7週間に詰め込んでいるため、必然的に授業はものすごく「濃~い」ものになります。当然、十分な事前準備をして臨まないと授業についていけないため、毎日大量の事前課題や宿題に追われることになります。そしてそのうちにすぐに中間試験になり、そのまますぐ期末試験、というように怒涛の日々が過ぎていきました。

個人的には、最初の1学期にこのような怒涛の詰め込みをしてもらえたのは2つの意味で良かったかな、と思っています。
一つは、最低限のハードスキルを一通りさらうことができて、MBA的な知識の全体感を何となく把握することができたこと。少なくとも各分野の入り口の景色までは見ることができたため、自分が何が得意・不得意なのか、そして今後何をより深く学ぶべきなのかについて考える十分な材料となりました。これによって、残りの1年半を自分が本当に学びたいことに効率よく振り向けられるという意味でも良かったと思います。
そしてもう一つは、自分の限界を超えた負荷をずっとかけられ続けることで、生き延びるためにタイムマネジメントをせざるを得なかったということ。私はもともとタイムマネジメントは非常に苦手で、どちらかというと完璧主義で常に目の前の仕事に全力投球というタイプでした。今まではそれでも、気合いと根性で多少人より長く仕事をすれば何とかなっていたのですが(まだ翌朝の締め切りまでは9時間あるから大丈夫!というような考え方で乗り切ることもしばしば)、このコア期間ではそれが全く通用しませんでした。もともと英語を読むのも遅いうえ、事前課題や宿題も1教科あたり数時間かかるようなものが毎日複数教科分出されるため、最初の頃は子どもたちと遊んで寝かしつけた後に(やることが多い日に限って、上の娘からパパ指名が入ってしまうのです…)それらを一つずつ完璧に仕上げようとして、全部終わった頃には既に朝、ということもザラでした。日本語環境であれば、それでも気合いで睡眠不足をカバーできたものですが、英語環境ではリスニング能力が極端に低下して、結局授業もほとんど頭に入ってこない、という最悪な状態に。このような失敗を何度か繰り返すうちに、どうしても生き延びるためには戦略的な妥協が必要だということが本能で理解できて、以前よりも効率を意識したやり方が(強制的に)身についたのは大きな収穫だったのではないかと思います。


なお、コアの各科目の概要は以下の通りです。

Accounting 前半7週の授業。企業の会計(財務諸表の作り方・読み解き方)を学びます。私は簿記3級を持っていましたが、当然ながら単語が日本語と全く違うので、ついていくのがやっとでした。後半のFinance等の基礎にもなります。
Quantitative 前半7週の授業。統計の基礎を学びます。基礎といっても、エクセルを駆使した回帰分析や検定など、実際のビジネスで使えれば強力な武器になるツールを実践的に学ぶことができます。個人的には理系バックグランドでExcelももともと非常に得意だったため有利でしたが、それでも学ぶことがとても多く、極めて有意義な授業でした。文系の人にとってはかなり重い授業だったと思います。
Critical Thinking 前半7週の授業。議論における論理(三段論法や帰納法・演繹法など)と、論理の誤謬(一見正しそうに見えるが実は論理的でない議論)について学びます。比較的抽象的な内容ですが、相手の議論の論理的欠陥を素早く見抜くトレーニングになりました。
Economics 前半7週の授業。この短い期間で、ミクロ経済学とマクロ経済学の基礎を全て学ぶという極めてチャレンジングな授業。ネイティブを含め、あまりの宿題の多さに圧倒されていましたが、個人的には何とか食いついていって得るものは多かったです。

Marketing 後半7週の授業。セグメンテーションや顧客の意志決定プロセスを踏まえたマーケティングミックスなど、マーケティングの基礎を学ぶ。ケーススタディ中心で、抽象的な議論が多かったため個人的には難解でした。
Finance 後半7週の授業。株式会社のファイナンスについて、主に投資家の視点からの様々な考え方を学ぶ。社債・株の評価や会社の資本コスト、プロジェクト評価、ストックオプションなど。非常に興味深くも奥が深く、難解な教科でしたが、基礎となる概念や計算方法については十分に身につけることができました。
Operation 後半7週の授業。トヨタのリーン生産方式等を中心に、効率的なオペレーションに必要な概念やその定量的な分析手法を学ぶ。Quantitativeで学んだ確率論等も駆使しながら、在庫管理や最適な設備投資等についての具体的な計算を身につけることができました。

Strategy 前半・後半を通して実施。SWOT分析、VRIO分析、S-Curves等のフレームワークを一通り学び、その後様々な企業のケーススタディ(事例研究)を通じて実際のビジネスへの適用を学ぶ。事前にケースを読み込んで授業に臨み、授業中には学生同士が議論をしたり交渉のシミュレーションをするなど、非常にMBAらしくスリリングな授業でした。

総仕上げとしてのFinal Case

コアの期間の最後には、これまで学んだハードスキル・ソフトスキルを駆使して再度チームで取り組むFinal Caseがありました。特に今年度からは、従来よりもさらにコアで学んだ知識を総動員して取り組む必要がある内容へと形式が変わりました。具体的には、今年はコストコの現状について外部環境・経営戦略・マーケティング・オペレーション・ファイナンス等の側面から分析した上で、今後の戦略オプションを提案し、向こう3年の財務諸表予測を立てるというもので、実際にアカウンティングからオペレーション、ストラテジーまで、多くの教科からの知識を実際のビジネスに当てはめる必要があり、それをチームメイトと協力しながら一つの戦略提案へと練り上げていくという、まさに総仕上げにふさわしいプロジェクトでした。

そして私にとってはこのプロジェクトは、最初のケースコンペでの雪辱を晴らす大きな目標でもありました。実際のところ、英語でのコミュニケーション力、特にリスニング力については当初からそれほど劇的に改善したわけではありませんでしたが、キツいコア期間を通して、とにかく恥を恐れず積極的に(ブロークンイングリッシュでも構わず)意見を言い、聞き取れなかった時ははっきりそれを伝えるということができるようになっていたため、今回はチームの中核の一人として大きく貢献することができました。これは自分にとっては本当に大きな進歩で、がむしゃらに頑張ってきたコアの期間の努力が報われた瞬間でした。

今年度のケースについて残念だったのは、コンペティションの形式ではなく審査員による採点方式になってしまったため、決勝戦等はなく勝敗も表彰もなかったという点でした(採点は単に成績評価に使うだけ)。そのため、従来のような大きな盛り上がりがなく終わってしまったのが個人的には残念でした。ただ、Kelleyの素晴らしいところは常により良いプログラムを目指して毎年改善を重ねていることであり、今回のFinal Caseもそういった改善の途上であるということを考えると、今後さらに改善されていくことを期待したいと思います。


全体を通しての感想

コアの期間中は、とにかくその場その場を何とかしのぎきることで必死で、少しでも前に進めているのかどうか不安になることもしばしばでしたが、終わってみると幅広いハードスキルと、そして何より上手くないなりの英語で何とか乗り切るソフトスキルが確かに身についており、確かな達成感のようなものを感じています。
実際、コアの大変さという意味では人によってある程度の幅はあったようですが、それでも誰もが(ネイティブのアメリカ人でさえも)一様に「非常に大変だった・何とか乗り切った」と口を揃えて言っていることを考えると、私たち全員にとってこのコアが一つの試練であり、大きな糧となったことは間違いありません。

コアについて別の角度からもう少し知りたい方は以下のリンクもご参照ください。
1. J.Lさんの記事(Kelleyの魅力~コラボレーション~
http://kelley-mba-japan.blogspot.com/2016/12/class-of-2018-j_22.html
2. 昨年度の記事(Integrated Core)
http://kelley-mba-japan.blogspot.com/2016/01/integrated-core.html
3. 2012年の記事(Kelleyの真価はチームワークに有り!)
http://kelley-mba-japan.blogspot.com/2012/12/kelley.html
4. 2012年の記事(1st year's core program is enormously challenging!!)
http://kelley-mba-japan.blogspot.com/2012/10/1st-years-core-program-is-enormously.html



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