2017年3月31日金曜日

GLOBASE India

Class of 2018のY.Yです。今回、2週間の春休みを利用して途上国の企業や団体のコンサルティングを行うプログラムであるGLOBASEに参加してきましたので、そこでのでの活動内容と学びについて少し具体的に紹介したいと思います。
なお、GLOBASEの行き先はインド、グアテマラ、ガーナ、ベトナムなどの中から選べるようになっていて、私はインドを選択しました。

GLOBASEの概要についてはホームページのこちらの記事もご参照ください:
https://kelley.iu.edu/kjsa/school-admission/extra-program/#globase(記事に記載されているKIPsは今回中国で開催されましたが、来年度はGLOBASEに統合され、KIPsとしての枠での開催はなくなるそうです。また、今年度行き先として選べたアメリカ(ネイティブアメリカンとのプロジェクト)も来年度はなくなるようです。)


Taj Mahalにて


プロジェクトの概要


スケジュール・授業の構成 GLOBASEの現地での活動は春休み期間(3月上旬)に行うのですが、プロジェクト自体はそれより早く、春学期の最初(1月第2週)から始まりました。クライアントの担当者とSkypeで毎週打ち合わせを重ねながら、彼らの抱える課題に対するソリューションを探りました。ちなみに、インド人は英語を話せるため、彼らとのSkypeミーティングは英語で行われたのですが、インドなまりの英語が私には聞き取れず、チームメイトにその都度教えてもらう必要がありました。(現地での対面コミュニケーションには問題はありませんでした)

通常の授業は1.5単位ですが、GLOBASEは3単位ということで、現地でのプロジェクトに加えて毎週の授業もありました。春学期前半7週間に開講され、プロジェクトマネジメントの方法論やインドの経済や文化、宗教、社会問題などを学んだ他、プロジェクトの進捗状況についての中間発表なども授業の中で行いました。

その後、実際にインドに滞在し、前半の1週間でクライアント先を訪問、後半1週間でインド各地の名所を巡り文化を体験するというスケジュールでした。

クライアントについて


私たちが担当したクライアントはCORD[1]というNGOで、インドの地方が抱える課題を解決し自立的な発展ができるように支援する活動を行なっています。具体的な活動内容としては、女性の自助活動支援や、マイクロクレジット(少額融資)の仕組みを活用した農業の効率化支援、健康・医療サービスの提供、障がい者向けリハビリテーションの提供など、幅広く行っています。


プロジェクトの内容


GLOBASE Indiaの中でも、私が選択したのはCRM(Customer Relationship Management: 顧客関係管理のためのシステムや戦略)に関するプロジェクトで、4人一組のチームで取り組みました。CORDがSalesforce.comなどのCRMシステムに興味を持っているということで、ニーズに沿った形のCRM戦略を提案することがプロジェクトの目的でした。ただ、実際には当初クライアント自身にとっても何を望んでいるのかがあいまいで、そもそも解決したい課題があるのかどうかすら不明確な状態だったため、雲をつかむような状態から始まって、そこから徐々に、Skypeミーティングを通じて手探りで問題点やソリューションへと近づいていくことになりました。


提案内容


最終的には、Salesforceなどの本格的なCRMシステムを導入するには高いレベルのIT技術者が組織内にいる必要があり、現状のCORDの人的資源では困難であると判断したことと、現時点でそもそもほとんど何の顧客情報も整理した形で蓄積されていなかったことから、まずは「はじめの一歩」として具体的で確実な改善が図れるよう、次のような成果物を作成しました。①基本情報を確実に収集するための情報収集カードを作成。②重複・分散していたデータベース(エクセルファイル)を統合し、さらにデータを視覚的に分析するためのシートを作成。③データ収集から入力・分析までの流れを説明したマニュアルと、より高度な顧客情報管理に向けたガイドラインを作成。


これらの成果物・提案はクライアントから非常に高く評価され、組織運営にも実際に反映してもらうことができました。当初の雲をつかむような状態を思い返すと、ここまで漕ぎ着けることができたということには感慨深いものがあります。





現地での最終プレゼンテーションの様子


プロジェクトからの学び


もともとMBA留学における個人的な大きな目的の一つが、エンジニアと企画・マネジメントとを「橋渡し」することによって新たなプロダクトやサービス、業務プロセスなどのイノベーションを起こせるような人材へと成長するということでした。今回GLOBASEにおいてこのプロジェクトを選択したのも、そのような「橋渡し」の経験を期待してのことで、実際にメンバー構成としては、私の他に元ITエンジニアのMBA生一人と、SPEA[2](公共政策大学院)の2年生二人ということで、まさに求めていたシチュエーションを得ることができました。

元ITエンジニアのチームメイトは当然技術面でアドバンテージがある一方、目の前の事象にフォーカスしすぎる傾向があり、広い視点での解決策の提案は苦手でした。一方、私も多少細部にフォーカスしすぎてしまう傾向があるものの、経営的視点に立って本質を考えるのが得意でした。他の二人はより広い視野を持ち、インド人とのコミュニケーションが得意だったのですが、逆に技術面においては何が可能で何が不可能なのかが分からないため、具体的なソリューションのアイディアを出すことは難しいようでした。

このような立ち位置の中で私が特に強みを発揮することができた場面の一つは、事前検討の初期段階で提案の基本方針を検討していた時でした。その時点で、既に何回かのSkypeミーティングを経て、寄付者に焦点を当てるという大方針は立っていたのですが、具体的な成果物について方向性が打ち出せずにいました。その時点ではSalesforce.comを使う案や、Google Driveをプラットフォームとして活用する案、あるいは自動メール送信ツールの作成やホームページへのオンライン寄付機能の実装など様々なアイディアが出ていたのですが、どれも決定的なソリューションであるようには感じられず、行き詰まっていました。ただ、その時点で私は何となく問題そのものはどんなツールを使うかではなく、むしろ情報マネジメントに関する明確な指針のなさにあるのではないかということを朧げながら感じていたため、情報管理の「ガイドライン」の必要性をチーム内で提案しました。そしてチーム全体でこの仮説を検証するための質問を用意してクライアント側に投げかけてみたところ、実際にガイドラインの必要性が確認できて、重要な一歩を進めることができました。この貢献は他のメンバーから非常に高く評価されたとともに、私自身にとっても技術シーズとユーザー側のニーズの両面を俯瞰できるということの強みを確認することができ、大きな自信につながりました。(渡米以来ずっと、英語力不足のためチームワークにおける貢献に苦戦していたため、この時にイニシアティブをとって議論を先導できたことは個人的に大きなブレークスルーでした。)

また、強みを発揮できた場面の別の例として、「ダッシュボード」の作成も挙げられます。Excelのデータベースを改善するにあたり、元ITエンジニアのチームメイトは、クライアントの要望通り「とにかく限りなくシンプル」にすべきだと考えており、関数などは一切使わずソート機能だけで十分だと主張していました。一方私は、日常的なユーザーにとっての便益も非常に重要でありながら、それだけでは不十分であり、経営者から見て私たちの提案の意義が直感的にわかるような、データからのインサイト(洞察)を提供することが不可欠だと考えていたため、視覚的にグラフで有益な情報を提供する「ダッシュボード」を作るべきだと主張しました。エンジニアではない2人のチームメイトは、インサイトの必要性については強く同意していたものの、言葉だけではいまいちどんなものが提供できるのか分からない、ということだったので、私がプロトタイプを作成することになりました。そして、大まかな見栄えや最低限の機能を実装したプロトタイプを作成して見せたところ、全員から非常に高い評価を得ることができました。さらに実際にクライアント先を訪問した際には、それがまさに現場側・経営者側のどちらもが必要としていたものだったということが判明し、私たちの成果物の中核をなすものとなりました。

このように、今回のブロジェクトを通じて、技術的な知見と経営的な視点の両方を活用することで本質的なソリューションを生み出すという自分なりの強みの活かし方を再発見することができました。また、コミュニケーションの回数や頻度の重要さについても大きな学びを得ることができました。以前の職場では、技術面と営業面の両方がある程度自己完結できてしまったため、新しいプロジェクトを動かすに当たっても、多くの人と協働するというよりは「自分一人でやりすぎてしまう」という傾向がありました。しかしながら、今回のプロジェクトは英語のハンデもあり、自分一人では到底不可能なものだったため、多くの面でチームメイトに頼ることになり、常に緊密にコミュニケーションをとりながら進める必要がありました。その結果学んだのは、他の人とコミュニケーションを数多く重ねながらアイディアを練ることによって、自分だけで大部分を完結してしまうよりもずっと洗練され、価値のあるものがアウトプットできるということでした。これは、今後の自分自身のリーダーシップのあり方を考える上で非常に示唆深い、ベースとなる体験になったと感じています。


チームメンバー・CORDスタッフとの集合写真


おわりに


 GLOBASEは他の授業と比べても、間違いなく負荷の高いプログラムではありますが、その分チームメイトも全員が深くコミットしており、密度の濃い、本気のチームワークを経験することができました。プロジェクトの内容も、クライアントが抱えるリアルで切実な課題を扱っているため、自分たちの貢献がそのまま組織の将来性に影響するという責任感を常に感じながら全力で取り組むことになりました。その結果、学びの面でも、また達成感という面からも、これまでのMBA生活の中でももっとも満足度の高い経験となりました。

 今回書いた内容は、どちらかというと個人的な要素の強い体験記となってしまいましたが、GLOBASEがもたらす密度の濃い時間は、他では得られない何か大きなものをきっと与えてくれると思います。ぜひ、Kelleyの大きな魅力の一つとして参考にしていただければ幸いです。



Holi Festivaln(ヒンドゥー教の色粉を塗り合う春祭り)にて




[1] CORD = Chinmaya Organization for Rural Development: Chinmayaというのは創始者の名前。
[2] SPEA = School of Public and Environmental Affairs: Kelleyに隣接した学部。多くの面で全米一位の評価を得ており、インディアナ大の看板学部の一つ。

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