2014年2月23日日曜日

MBA留学で得た6つのもの




Class of 2014のN.K.です。私は、派遣元企業との約束どおり、19ヶ月間でMBAプログラムを修了し、今月末に日本への帰国の途につきます。2012年8月から今日まで本当にあっと言う間の留学期間でした。今回は最後の投稿として、私がMBA留学から学んだ6つのTakeawaysについて紹介させていただきたいと思います。ブログで伝えきれるのはほんとうに一部のみですが、MBAを受験中の方や、興味を持ち始めた方にとって参考になれば幸いです。

1) 経営全般のハードスキル

経営管理能力の強化は、MBAを志す人の主な目的だと思います。私も、企業の経営資源であるヒト(人的資源管理)、モノやサービス(オペレーション、マーケティング)、カネ(ファイナンス、会計)、情報(統計やITシステム)、や、それら経営資源を数量的に分析・管理するための基礎となる定量分析、さらにそれら資源の組み合わせによりどのように経営目標を達成するかの戦略(ストラテジー)といった経営全般のハードスキル(知識・フレームワーク)を習得することが出来たと思います。
専攻にしたファイナンスの分野については、ほぼ知識ゼロの状態からスタートしたこともあり、多くの有益な知識を学びました。私はコーポレートファイナンス系のコースを中心に履修しましたが、企業価値を求めるためのバリュエーションの手法、資金調達方法とその調達コストにまつわる理論などを学ぶことによって、企業価値を最大化するためにどのような財務活動を行うべきかという視点を得られることができたと思います。
また、副専攻にしたマーケティングの分野においても、B2Bマーケティングのコースや、価格管理のコースなど様々なトピックを学習できたり、デュポン社へのコンサルティングプロジェクトに参加したりと、非常に有益な経験だったと思います。



13年4月に行ったデュポン社への最終プレゼン後の1枚。マーケティングエクゼクティブへのプレゼンは緊張しました・・。


2) コミュニケーション能力

Kelleyの日本人は私の代のClass of 2014では3名しかおらず、総勢180名いるClass of 2014の学生において僅か2%の存在でした。私がこの1年半で培ったコミュニケーション能力とは、このような状況の中で、“組織の中のマイノリティーとして、国籍の違う人間と共通言語である英語で喧々諤々の議論を行い、彼らの意見・価値観も理解したうえで、自分の意見・価値観を理解してもらう”スキルです。ビジネスプロジェクトやチームアサインメントなどを通じて、このようなコミュニケーション能力を鍛えられたことが本当に財産となりました。

言うまでもなく、コミュニケーションの1番の障壁が英語でした。TOEIC900点以上、TOEFL100点以上、学部時代に1年間のアメリカ留学経験などほとんど役に立たないくらい、やはり相当英語には苦労しました。。この1年半の間で今まで感じた事のない緊張感を味わい、恥をかき、汗をかき、失敗もしました。言葉の壁であったり、文化の違いであったり、単なる自分の理解不足であったり、原因は様々ですが、こうした失敗の経験は殆どの場合、日本の会社で普通に働いていたら良くも悪くも得られないことだったと思います。
この1年半は、こうした失敗の経験をバネに反骨精神で多くのことを学び、また失敗し・・・の繰り返しだったように思います。人間は、年齢を重ねる毎に、失敗を恐れてつい保身や居心地の良い場所に留まってしまうことが多いと思いますし、私も例外ではないと思います。しかし、この留学では、失敗を恐れず自分のコンフォート=ゾーンを破ることの大切さを学ぶことができたと思います。
例えば、クラス内のディスカッションでは、周囲に合わせて恥をかかない程度に無難な発言をするくらいなら、思い切って日本人的な価値観に立脚したユニークなアイデアを提案した方が授業への貢献度としては高かったと思いますし、実はそれが重要で教授やクラスメイトも評価してくれることが多かったように思います。また、筆記テストで満点を取るよりも、クラス内ディスカッションやチームミーティングで自分の主張を通す方がよっぽど大変でしたが、その分学びは多かったと思います。
1年や2年アメリカで生活しただけでは流暢な英語はしゃべれるようにはなりませんが、下手なりに人前でしゃべる度胸、反対意見が出ても主張を通すハート、意思疎通のための熱意、といった本当の意味でのコミュニケーション能力が鍛えられたのではないかと思います。



13年6月に交換留学先のドイツで行ったDHL社へのプレゼン(本社ボンにて)。




3) 世界中に広がる人的ネットワーク

この留学を通じて、国籍を問わずKelleyの仲間とは非常に深い付き合いをすることが出来ました。中国やインドからの留学生は、自分の国を離れアメリカでの就職にチャンスをかけてビジネススクールに飛び込んできています。そんな彼らからは、自分が忘れかけていたハングリー精神を学びました。また、最初の4ヶ月間に行われたコアプログラムは非常にハードで、精神的・肉体的にもかなり辛い時期もありましたがそんな時に留学生の友人に励ましてもらい、彼らは心の支えにもなってくれました。
我々と同じ製造業であるサムスンやインテルなどに就職する仲間も多く、彼らとは卒業後のキャリアゴールや人生観について語り合い、たくさんの刺激をもらいました。KelleyのMBAプログラムの学生だけでなく、夏に交換留学したドイツのケルン大学のプログラムの参加者や、韓国の成均館大学からの交換留学生などとも親交を深めることができました。こうした出会いによって、従来の仕事や友人関係といった繋がりとはまた別の、新しいネットワークが生まれたと思いますし、彼らとの関係はこの先長い目で見て仕事面でもプライベート面でも人生を豊かにしてくれるはずだと思います。


14年2月、私の送別会にこんなに友人がきてくれました。

交換留学で独ケルン大学へ。フランクフルトの欧州中央銀行を訪問しました。



4) 意思決定のトレーニング

ビジネススクールでは、ケーススタディ (実際の企業であったストーリー+データが20-30ページほどにまとめられた文章) を元にして、様々な議論を行います。
具体的に、ケーススタディは、『X社のMarketing Directorであるジョンが、自社の新製品の導入に際して、Aというチャネルを利用して$300で販売するのか、Bというチャネルにて$200で販売するのかを検討しており・・・ CEOへの提案が5日後に迫っている・・・』といったような展開が多く、だいたいのストーリーは途中で終わっており、その状況に直面した主人公(ジョン)が、最終的にどのような意思決定を下し、結果(CEOの反応)がどうなったかについては書かれていません。

クラス内のディスカッションの内容も、「あなたならどのような意思決定を下すか、そしてそれはなぜか?」という点が中心となります。当然ながらケーススタディから得られる情報は限られており、不完全な情報の中で、自分がどういう基準でどのように意思決定を下すべきか、という点を考えさせられる機会が何度もありました。

ひとえに、会社のトップの仕事は限られた情報と時間の中で、その企業にとってベストな経営の意思決定を下すことだと思います。企業経営においては、決断力や実行力が大切だという人もいますが、私はその前の判断力がより大切であると思います。経営者が100%の情報を待って正しい判断を求めると失敗に繋がりやすく、感覚的に70~80%(もしくはそれ以下)という段階で最適な判断をすることを心がけなくてはならない、ということを学びました。ビジネスに不確実性はつきものですが、ケーススタディをベースにした授業を重ねることで、そうした不確実性な環境下における判断力を磨くトレーニングができたと思います。(参考:古賀洋吉さんのブログ)



5) グローバル基準で自己分析を行うチャンス

アメリカのビジネススクールに留学するにあたり、「グローバルビジネスの場で自分の実力は果たして通用するのだろうか?」という点をずっと考えていました。この1年半は、自分自身を客観的に分析する機会が増え、自分と同世代の“世界のライバル”達と、現在の自分を比較し、長所短所を認識することができたように思います。
結論ですが、世界中からKelleyに集まってくる優秀な学生と勉強を共にし、「頑張れば彼らとも伍して戦うことができる」と思えるようになりました。あくまでも経験則に基づくものですが、例えば、自分はアメリカ人よりも会計やファイナンスなどの数字系の分野が得意だったり、PowerPointやExcelを使って情報を整理・分析できる能力は強かったりと「自分なりに磨けば通用する部分」があると認識できた点は自信に繋がりました。自分というよりも総じて日本人はそうだと思います。
一方で、ロジカルシンキング、プレゼン能力、などの面では、「自分はかなり下」だと思い知らされる面もたくさんありました。このようなグローバルな尺度で自分のビジネスリテラシーを客観的に分析できる経験は、日本人がマジョリティーの環境で働いていたら得られなかったことだと思います。
グローバルなビジネス環境で活躍できる人材になるべく、帰国後はそういった課題点の克服に努められればと思っています。



12年12月、4ヶ月間一緒にコアプログラムを生きぬいた赤組クラスメイトとの集合写真


6) 日本に対する(良い意味でも悪い意味でも)焦燥感

Kelleyは特に、日本人学生の数が相対的に少ないので、”日本代表”として矢面に立つ(立たされる)機会が多かったと思いますが、留学は“自分”だけでなく、日本という“国”やその“企業”についても客観的に考える機会を与えてくれたと思います。
総じてアメリカのビジネススクールにおいて“日系企業”のプレゼンスの高さを実感する機会は多かったと思います。マーケティングやオペレーションの授業では自動車メーカーを始め様々な日系企業が紹介されました。もちろん悪い例として登場するケースもありましたが、改めて日本企業について新しい視点を持つことが出来たと思います。
しかしながら、個としての“日本人”のプレゼンスはやや不安な一面も感じました。アメリカのビジネススクールではインドや中国からの学生が増え、日本人の数や存在感は減る一方です。Kelleyでも数年前まではJapan Tripという日本企業への訪問プログラムがありましたが、今では新興国企業への訪問プログラムに変わってしまいました。それだけ国としての魅力が減ったのだと思います。また、サムスンは毎年数十人をハーバードなどMBAトップ校に送りだしているそうです。さらに、台湾、中国、韓国、ASEANからのMBA留学生には女性が多く在籍しており、ビジネスの場において、日本の女性にも活躍の場を与えられる仕組みをもっと作るべきだと感じました。留学を通じて得たこうした経験から、皮肉にも日本社会に対する焦燥感・不安感のようなものを感じざるをえませんでしたが、まずは自分が変わり、そして企業の中で少しずつ変化を起こしていき、そして最終的には日本の社会にも影響を与えられるようになったらな、と漠然とですが志のようなものを持つきっかけになったように思います。
*話は少し逸れますが、Kelleyの先輩からシェアしていただいた“中原徹氏(大阪府立和泉高等学校長)意見発表”の記事は、私がこちらで感じた気持ちを的確に捉えており、少々長いですが参考までにこちらで紹介させていただきたいと思います。



以上、とても長くなり恐縮ですが、この投稿をもって私のKelley生活の締めくくりとさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました!

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