2023年5月3日水曜日

アメリカでの現地就職

Class of 2023T.O.です。今回はアメリカでのフルタイムの就職活動についてお話しできればと思います。私は幸いにも現地採用のお話を頂き、留学開始当初より希望していたアメリカでの就職を実現することができました。2年間の留学生活を通じて現地就職で重要だと思った観点について書き残しておくことで、将来私費MBA留学からアメリカでの就職を希望している方の参考となれば幸いです。

1. ネットワーキング

アメリカでの就職活動において、ネットワーキングは極めて重要です。これはポジションへの応募時に現役社員からのリファラルを受けているかどうかでその後の書類選考や面接の通過率が大きく変わるという現実があるからです。実際にほとんどの企業のポジションに応募する際にリファラルの有無を確認する項目があり、私自身の経験からもそこで社員の方の名前を記載したケースでは書類選考の通過率は高かったように思います。

この手の話題でよくある勘違いとしてネットワーキングとソーシャルイベントを混同しているケースがあるように思います。MBAではもちろん同級生との飲み会やスポーツイベントも盛んですが、これは単なる遊びの一環であり、ここで申し上げるネットワーキングとは全くの別物になります。ネットワーキングとはあくまで仕事を見つけるためのコネクション作りのことであり、みんなで盛り上がる時間とは異なります。卒業後に自ら起業するのであれば同級生とのつながりが将来の仕事に役に立つことはあるかと思いますが、企業勤めをする場合には横のつながりが将来のキャリアアップにつながるケースも稀なように思いますので、就職活動やキャリアアップという視点のみを考える場合には、この辺を混同せずに時間を有意義に使っていく必要があるように思います。

ではどのようにリファラルを受けるかというとやはりその会社で働いているアルムナイに直接コンタクトを取ることが最も効率の良い方法になります。大学が主催するネットワーキングイベントに参加してつながりを作るという方法が最も一般的だと思いますが、昨今はLinkedInで簡単にアルムナイと繋がれますので、寧ろ自身で積極的にアプローチしていく方が効率は良いかもしれません。アルムナイにコンタクトをとった後は30分程度のチャットの時間を設け、面接時に必要な情報の収集及びリファラルの依頼を行います。希望ポジションで働いている方と一発で繋がれれば良いですが、そうでない場合はその人を経由して当該ポジションで働いている社員を再度紹介してもらうというアプローチも必要となってきます。

社員の方もいくら同じMBAの後輩といってもあまりにも常識を欠いているような人とは一緒に働きたくないと思いますし、確実にリファラルを受けるためには30分という短い時間のなかでしっかりと自分の魅力をアピールすることが大切になってきます。しかしながらアメリカ特有のコミュニケーションに慣れていない留学生はここで躓くケースが多いように思います。純ジャパである私も最初はどのように会話を進めて良いかわからず、今振り返ると内容よりも所作振る舞いで多くの失点をしていたように思います。KelleyではAcademyやキャリアコーチとの個別セッションを通じて自然なコミュニケーションスタイルの学びの時間を設けてくれており、私もこのような機会を通じて徐々に違和感なく30分のチャットをやりきることができるようになってきたように思います。私のように特段の海外経験がない日本人がアメリカのネットワーキングでうまく立ち回ろうとした場合、同様にそれなりの訓練が必要になると思いますので、最初は恥をかくことを承知の上で積極的にネットワーキングイベントに顔を出し、たくさん失敗しながらフィードバックをもらい少しづつアメリカ流のスマートな会話術を身に着けていくことをお勧めします。

 

2. 求人情報(Job Description)とスキルセットの整合性

日本の中途採用と異なり、アメリカでは求人ごとに業務内容やそのポジションで求められるスキルがJob Descriptionという形で明記されています。端的に言えばその要求事項をどれだけクリアできるかでそのポジションからオファーをもらえる可能性がだいたい分かります(ビザ等の問題もあるので全ての項目をクリアしたとしても厳しい競争であることは依然変わりませんが)。そのような環境にある以上、MBAを経てアメリカで仕事を見つけようとした場合、何らかの領域で尖った能力を証明する必要があります。海外MBAを目指す方の中にはこれまでの職歴とは全く異なる領域にチャレンジするために留学を志す方もいらっしゃるかもしれませんが、私の印象としてMBA前の職歴は転職市場において極めて重要なように思います。実際に私が受けた面接時の質問の多くは前職に関することであり、書類選考通過の理由もポジションが求めるスキルセットを前職での経験を通じて身に着けていると期待されていることが大きかったように思います。そのためアメリカで就職しようと思った場合、Pre-MBAPost-MBAの間に何らかの一貫性が重要であり、どうしても新しい仕事に挑戦したい場合はタイトルや年収の大幅な上昇は期待しない方が良いかもしれません。

よくある意見として、MBA2年間でしっかり勉強すれば特定の分野での専門性が獲得できるので大きなキャリアスイッチが見込めるというものがあるように思いますが、個人的にはこの見解には少しズレがあるように思います。私が思うにMBAでの勉強自体が専門性を高めるのではなく、MBAを経ることでより学びの多い仕事に就く可能性が高まり、そのような仕事を卒業後に数年間経験することで実務レベルの高い専門性が得られるのだと思います。そもそも実務レベルの専門性とは仕事で活かせる知識やスキルのことであり、座学以上に現場での実践経験を通じた学びの方がはるかに価値があると思います。ではなぜ態々現場から離脱してまでMBAに行くのかというと、MBAが提供するリソース(卒業生のネットワーク等)を活用することで今より理想的な仕事に転職できる可能性が高まるからなのだと思います。私もKelleyの学生だと名乗るだけでアメリカの超大手企業のSenior Managementクラスの人とたくさん接点を持つことができました。そのような機会を最大限活用し、今より多くのことが学べるレベルの高い(自分のキャリアプランに近い)職場に転職しそこで数年間の職務経験を得ることで、初めて高い専門性を獲得できるのだと思います。言い換えるとMBA自体はそのような成長の場を得るためのチャネルとしての機能を果たしており、MBAでの勉強は一般的なビジネス概論を理解する手助けくらいの位置付けであり、あまり就活時のアピールポイントにはならないと思います。こういった点からも、現地就職を希望される場合には、Pre-MBAのキャリアと近しい業界や職種を選ばれる方が採用の可能性は高まるように思います。

 

3. 計画性&一貫性

上記のような点を踏まえると、意外とMBA留学期間中にあれこれと悩んでいる時間は無いのではないかと思います。MBAは本当にバラエティ豊かな成長の機会を与えてくれるので、自身の選択次第でいかようにも可能性を大きくすることができると思います。逆に言えばその豊富な選択肢をどのように取捨選択するのかは自身の判断に委ねられており、その唯一の判断根拠が自身のキャリアプランなのだと思います。前職との関係性や自身のゴールとのつながりを無視して手当たり次第にいろいろなことに時間を割いていると、採用の立場からはあまり競争力のある人材には映らないように思います。ただでさえ外国人ということで言語的な弊害やビザの問題で余計なコストを背負っていること、多くの日本人留学生が30代という即戦力としてのパフォーマンスが期待される年齢であることを鑑みると、やはりネイティブと比べて何かに秀でている必要があるのだろうと思います。

そのような点を踏まえ、現地就職を希望する留学生の方は周りの学生以上に計画的なキャリアプランをもってMBA留学の2年間を過ごす必要があるように思います。もちろんMBA受験は大変で留学期間中のプランは二の次になってしまうことは仕方ないとは思いますが、DAY1から最高のスタートダッシュを切るためにもできればMBAプログラムが開始する前にこれまでのキャリアの棚卸しやPost-MBAで希望するポジションに求められるスキルセットは何かくらいは整理しておいた方が良いと思います。その上で、MBA期間中のアクションプランを極力具体的に計画したうえで留学生活を開始できると良いのかなと思います。

とても良く練られたアクションプランであったとしても、計画の途中でプランが変更になることは公私を問わずよくあることだと思います。MBAにおいても優秀な学生との出会いやリクルーティングイベントを通じて、これまで知らなかったキャリアの可能性に気付くこともあるかと思います。こういった計画外の出来事との出会いも留学期間の醍醐味だとは思いますが、純ジャパで絶対現地就職という考えを持っているのであれば、あまり大幅な計画修正はしないことをお勧めします。

レイオフが絶えない昨今の雇用情勢にも関わらず、Kelleyのクラスメートのほとんどは大手企業からの内定を勝ち取っています。しかしながら唯一苦戦しているセグメントは「アメリカでの経験(学歴、職歴)を持たない東アジア人」です。我々日本人を含む東アジアの人々は良くも悪くもアメリカと全く異なる文化の中で育っており、就職活動という点では残念ながらそれが悪い意味で際立っているように思います。ネットワーキングだけを見てもやはり我々のコミュニケーションスタイルは米国で一般的とされているものと大きく違うため、採用側からするとスキルセットが同等のネイティブがいれば違和感なくコミュニケーションがとれる彼らを優先するということはある程度仕方のないことのようにも思います(ビザも不要なので単純に彼らの方がコスパが良いという側面もあると思います)。

そのようなハンデキャップを最初から背負っていることを考えると、私のような米国での勉強も仕事の経験も無い超純ジャパが現地で仕事を見つけることはものすごくハードルの高いチャレンジなのだと思います。であるからこそ、自身のキャリアプランを信じてブレることなく2年間を走りきる一貫性がとても重要になる気がします。残念ながら卒業を目前に控えた現時点でも数名のクラスメートは未だに仕事が見つかっておらず、そのほとんどがアメリカでの学業や仕事の経験を持たない東アジア人です。そのような状況で私が幸いにも仕事を見つけることができたのは、ある程度計画性のあるキャリアプランを持ってそれを軸にブレない2年間を過ごしたからではないかと思っています。否定的(客観的?)に自身の留学期間を振り返ると、あまり人の言うことを聞かず好き勝手に過ごしていたように思います(ElectiveFinanceAccountingしか受けなかったですし、よくわからないイベントの誘いは一切無視していました)が、現地就職という大きな目標を達成するためにはある程度の割り切りや妥協、強かさのようなものが求められるのではとも同時に思います。

 

以上私の拙い経験に基づいてMBA留学→現地採用のために必要と思えるポイントについてお話させて頂きました。若干表現がネガティブすぎるようにも感じるのですが、総じていうと現地就職を目指して過ごした2年間はとても楽しかったです。この歳にもなってこれだけ無邪気に個人的な夢を追い続けられることがとても贅沢なことだと思いますし、改めて留学してよかったなと思います。今回は考え方や心構え的な側面からお話ししましたが、他にもビザを始め手続き的にもとても煩雑で外国人として働くことはとても面倒だなと思います。そのようなコストを鑑みても、もしも海外でチャレンジしたいと考えている方がいるのであれば上記のような点を踏まえてとりあえずやってみるというのも一計ではと思います。私の経験が少しでも皆さんの役に立てば幸いです。