2022年12月1日木曜日

ワシントンキャンパスプログラムについて

Class of 2023Y.Yです。今回はKelleyExtra Programの一つである、ワシントンキャンパスプログラムについてご紹介したいと思います。

ワシントンキャンパスはビジネススクールや公共政策大学院の学生などを対象に、政治とビジネスとのかかわりについての理解を促進するために1978年に設立された非営利団体です。本拠は議会議事堂にほど近い、ワシントンDCの中心にあります。Kelleyの学生が参加できるMBA向けのプログラムは年に数回、5日間の日程で開催されています。Kelleyの学生であれば参加費は不要(ただし、交通・宿泊は自費です)で、正式なコースとして単位も付与されます。私は、1017日~21日の回に参加しました。


1.プログラムの概要

プログラムの主な目的は、「米国の企業がどのような目的・アプローチでロビー活動を行い、法案・規制に影響を与えているか」を学ぶことにあります。そのために、さまざまな業界のロビー活動担当者、元連邦政府機関の高官、メディア記者などから、政府・規制当局などとのかかわりあいの実態について講義を受けることになります。なお、ワシントンプログラムにはインディアナだけでなく、エモリー、UNCUCLA、などさまざまなビジネススクールの学生が参加するので、お互いを知る良い機会にもなると思います。

5日間の講義終了後は、レポート2本の提出とチームプレゼンテーションが求められます。チームプレゼンテーションの課題は、特定の企業とその直面する課題を選択したうえで、それらを解決するためにいかに政府、議員、規制当局にアプローチするかを考えるというものでした。私のチームはあるフィンテック企業を題材に、FRBFDICOCCといった機関に対してどのように適切な(互いの利益となるような)業界規制を求めるかを考えました。もともと、米国特有の複雑な金融規制がビジネスとのかかわりあいのなかでどのように決まっているかに関心があったので、このチーム課題は私にとってよい勉強の機会になりました。

 

2.雑 感

端的にいって、米国における企業のロビー活動の規模の大きさに驚かされました。私が参加した回では金融、情報通信、食品、電子機器製造業など、さまざまな業界の有名企業からゲストスピーカーを招き、講義が行われたのですが、すべての企業がロビー活動のための専門の部署をもっていました。こうした企業は、議事堂の近くにオフィスを構え、定期的に議員やそのスタッフ、あるいは規制当局などに働きかけを行っているようです。さらには、こうしたロビー活動を支援するためのコンサルティング企業も数多く存在しています。

ロビー活動の中身はその企業や業界がおかれている状況によって異なります。しかし、①まずはデータなど使いながら、業界の置かれている現状について関係者の理解を促す、②そのうえで、新たな法案・規制(あるいは規制緩和)を提示し、それらが業界に利するだけでなく、社会全体の厚生を促進するものであることを示す、という点は、どのロビイングでも共通する戦略のようです。特に、あるゲストスピーカーが言っていた「法案、規制の作成を担当する議員、政府スタッフがその対象である業界の専門家であるとは限らない。だからこそ、まずはその業界について理解を促すことが重要である。」という言葉は印象的でした。ロビー活動というと、企業や団体が私的な利益のために政治を誘導するといったネガティブな印象があり、またそうした側面を完全に否定することはできません。しかし、規制する側が業界について誤った認識をもっていれば、それもまた社会にとって不利益になることも事実です。今回のプログラムをつうじて、企業の積極的なロビー活動には、一定の社会的な役割があるのだと考えるようになりました。


3.最後に

以前、官庁に出向していたこともあり、もともと政治には関心があったのですが、ワシントンプログラムは日本とは大きく異なる米国企業のロビー活動の実態を知る良い機会になりました。なお、日本ではビジネスと政治のかかわりあいについて意識的に学ぶ機会は少ないと思うのですが、実際は日本でもビジネスと政治は切っても切れない関係にあります。ワシントンキャンパスはそうしたビジネスと政治との関係を意識的に考え直す良い機会になると思います。留学の際には、ぜひ参加をおすすめします。

Kelleyに関して質問等ございましたら、お気軽に在校生までお問い合わせください。

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