2019年9月30日月曜日

ワシントンキャンパス・プログラム

Class of 2020MOです。9月に秋学期が始まってから約1か月が経過し、本ブログ自体久しぶりの更新となってしまいました。受験生の方々はスコアメイクやアプリケーションの作成等、ご多忙な時期かと思いますが、軽い息抜き的に本ブログをお読みいただければと思います。また、Kelleyについて、より深くお知りになりたい場合には、こちらよりご連絡ください。

さて、今回は、夏休み期間終盤の5日間(8月19日~23日)を使って、ワシントンキャンパスという学外プログラムに参加してきましたので、そのプログラムのご紹介です。

プログラムの概要

ワシントンキャンパスについてざっくり言えば、実際にワシントンDCに赴き、ゲストスピーカーの講演や連邦議会議員のオフィススタッフの話を通じて、政治・行政とビジネスとの関係性を理解しましょう、という趣旨のプログラムです。ゲストスピーカーは大臣経験者、連邦政府機関の高官、利益団体のトップ、大規模リコールを行った企業のリコール責任者、メディアの記者等々、幅広い関係者が招かれていました。また、学生側も、Kelleyだけでなく、Michigan RossTexas Austin McCombsといったビジネススクールの学生有志が参加していました。
最終日にはテストがあり、また、グループプロジェクトとして、ワシントンキャンパスで学んだことを踏まえ、各グループで任意の企業を選び、その企業のビジネス拡大のための政策提言及びその提言を法律として制定するための戦略の策定を行うという課題がありました。

どのような話が聞けたのか、そして雑感
(※本プログラム全体において、オフレコルールが適用されるため、誰がどのような話をした、ということを明確に記載することができない点はご容赦ください。)

Kelleyに入学する以前、私自身が国家公務員として働いていたこともあり、ビジネスに従事されている方の見方とは少し異なるかもしれませんが、本プログラムを通じて聞いた話と私の雑感は以下のとおりです。

1.ロビー活動
複数のロビー活動を行う組織のトップが言っていたのは、ロビー活動は、特定の企業・産業のビジネスを拡大するためのものであると同時に、社会全体の利益を増やすものでなければならない、もしそうでなければ、政策として実現される可能性が極めて低い、ということです。例えば、ビール会社が飲酒可能な年齢制限を引き下げるためのロビー活動をしても、社会的に反対され、実現しないでしょう(米国の飲酒可能年齢は21歳以上で、スピーカーが議論のために引き合いに出していたのが飲酒可能年齢18歳以上のメキシコでした)。
言われてみれば当然な気もしますが、その話を聞くまでは、もっとロビー活動は自分たちの企業や産業への利益誘導だけのために湯水の如くお金を使うようなイメージを勝手に持っていたので、ロビー活動への認識を改める良い機会となりました。
また、意外だったのは、ビジネスに従事している米国人の多数がロビー活動にそもそも関心がなく、なんとなくロビー活動に対してネガティブな印象を抱いているということでした。本プログラムに参加する前には、米国ではロビー活動が盛んに行われていることもあり、米国人はロビー活動にポジティブという思い込みがありました。

2.法案の作り方
米国と日本で、法案作成の際に利害関係者の意見をどのように反映するか、というプロセスが異なっていることが興味深いと感じました。米国では、議員とそのスタッフが法案作成の主導的な役割を果たしており、議員のスタッフが実際に法案を書くこともあるとのことでした。日本では、官庁が利害関係者を集めた有識者会議を開き、その場での議論に基づいて法案を作成、国会に提出するというやり方をすることが多いようですが、様々な関係者を会議に呼んで議論することで公平性を担保しようとしている日本に対して、米国では議員やスタッフに直接コンタクトする機会は誰にでもあるので、意見がある場合には直接働きかけるべし、としているところにある種米国的な考え方を感じました。(実際に、議員スタッフも、改善してもらいたい問題がある場合は住んでいる州の議員に州の一住民として電話をかけてもらいたい、いつでもウェルカムだ、との話をしていました。)
また、法案作成に主導的な役割を果たす議員・そのスタッフに直接働きかけることにオープンであるからこそ、議員からしても、ロビイストの持つ問題意識は法案作成プロセスにおいて貴重な情報源であり、またロビー活動が米国で活発な一因となっているのだと思われました。

3.政府による規制の考え方
ワークショップがあり、そこでは、参加者を規制当局・リンゴジュース製造工場、リンゴ農家の3グループに分け、リンゴジュースの安全性を確保するためにはどのように規制をかけるのが望ましいのかというトピックが議論されました。その中で印象的だったのは、米国では問題が起こるまでは規制しない一方で、欧州では問題を起こさないようにとの観点で規制を作るとの発言でした(米国でも問題の発生を予防するための規制はありますので、話をわかりやすくするために、少し単純化しすぎなきらいがあるかもしれませんが)。日本の規制もどちらかと言えば欧州よりだと思われますが、新しいものを取り入れてみて、問題が起こらなければOKだという米国の規制への姿勢がイノベーションを促進する源泉となっているように感じられました。

総括すると、新たな学びも多く、また、知識としては既に知っていたことであっても、実際に実務をやっている人の話を聞いて、改めて深く理解することができたことから、とても有意義な経験でした。

その他、ワシントンキャンパスについての情報は以下をご覧ください。
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