2019年5月8日水曜日

パーソナル・リーダーシップの授業について

Class of 2019のK.I.です。これがKelley日本人在校生ブログへの私にとっての最後の投稿になりますが、今回は最後の学期に受講した授業”W579: Personal Leadership”での学びについて紹介させてください。

Personal Leadershipとは、中長期的な目標に向けて自分自身をリードしていくことです。KelleyではLeadership Academyを始め様々なLeadeshipの学びの場がありますが、この授業は今期から初めて追加された授業で、卒業を目前に控えた2年生限定として開講されました。講師のRay Lutherは米軍の後にP&Gで長く勤務され、現在はGCS (Graduate Career Services) のコーチとしてコーチングの経験が豊富にある方です。

さて、Personal Leadershipと聞いてどのようなことをイメージされるでしょうか?私は初めて聞いた言葉でしたが、大まかに言うと2つの重要なポイントがあります。それは「自己理解」と「自分自身と自分を取り巻く環境の客観視」です。

まずは「自己理解」です。自分はどのような家庭で生まれ育ち、どのような教育を受け、どのような経験をして今MBAを目指すに至っているのか?そして向かう先に何を望むのか?という分析をPersonal Compassというツールを用いて自己分析していきます。Kelleyの特色あるプログラムとしてMe, Incがありますが、自己分析という意味では似ているところがあります。しかしながら、Me, Incの時点では「これからKelley MBAでどのようなことが待ち受けているのだろう?」という視点ですが、卒業間際の時点ではポストMBAのキャリア、人生について「What’s next?」という視点に切り替わっています。2年間の学びを振り返り、例えば2年後にどのような自分でありたいか?ということをイメージするエクササイズを行えたことは、ポストMBAで何から手をつけていけばいいかのマイルストーンになるのではないかと思います。

次に、「自分自身と自分を取り巻く環境の客観視」です。授業では繰り返し、Sensemakingという思考プロセスが紹介されました。Sensemakingとは文字通り物事を理解する (make sense)ということですが、これは何か事象が起こった際に、「どのような因果関係で発生したのか?」「この事象が次に影響するものは何か?」「この事象に対し自分はどう反応したか?」について、その事象の当事者である自分自身が客観視することに努めるというものです。

この考え方の一例として紹介されたビデオに、「This is Water」というものがあります。これは2005年にアメリカの作家であり言語学者のDavid Foster WallaceがKenyon大学の卒業生に向けて行ったKeynoteスピーチを元にしたものです。
https://www.youtube.com/watch?v=eC7xzavzEKY


水槽にいる金魚は、自分が水の中にいるということに気がついているでしょうか?仕事が終わって帰宅すると食料品がないことに気が付き、渋滞の中ドライブしてやっとたどり着いたスーパーマーケットのレジに並んでいるときの感情を、私達は客観視できているでしょうか?レジでたくさんのクーポンを取り出して会計に時間がかかっている人のことを、短絡的に苛立った目で見てしまっていないでしょうか?

自分たちが、事象に対して無意識に反応してしまうデフォルト・セッティングの感情や反応を意識することが出来れば、それを変えることも可能になるはずです。感情が我々をOwnするのではなく、我々が感情をOwnするということを意識することで、自分自身を客観視することができます。

私が最も興味深いと感じたエクササイズに、Immunity to Change Map(変化への免疫反応マップ)というものがありました。人間はしばしば変化を嫌がるものですが、その嫌がる根源とは何か?について分析するツールです。例えば、「他者からのフィードバックをもっと受け入れられるようになりたい」という目標があるとします。では、フィードバックを受け入れることができていない理由はなぜでしょうか?もしかしたら、ネガティブなフィードバックを受けると、自分が否定されていると感じてしまう不安があるのかもしれません。または、自分のことは自分が理解しているから、他人にとやかく言われたくないという感情があるのかもしれません。こうした、変化を拒む自分の免疫反応を探り出していくことで、目標を達成するための行動に結びつけていくことが可能になります。

こうしたエクササイズやフレームワークについて様々学んだ後、授業の最終課題として生徒一人ひとりが今後2年間の自己開発プランを発表しました。この授業を通じてそれぞれが定義した2年後の自分、直したい欠点、将来の夢などについて真剣に考えた内容が揃っており、クラスメートからインスピレーションを受けることができました。

私はKelleyでファイナンスの専攻をしたのですが、リーダーシップやマネジメント系の授業は、掴みどころが難しいと感じることがしばしばありました(個人差があります)。しかしながら、この授業は自分自身を客観視するという、言わば普遍的なテーマを扱い、また日常的に使えそうなフレームワークを多々提供してくれたため、実践的な内容でした。何より、卒業してキャリアに戻る前の時期に、自己を振り返る時間が取れたことはとても価値あることでした。

このように、Kelleyでは様々な分野の授業を精力的に開講し、生徒の学びの幅を広げる努力が行われています。Kelleyで行われているExperimental Coursesにご興味のある方は、ぜひ在校生へご連絡ください。

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