2018年1月7日日曜日

イノベーションに関する学びの紹介:W511 Venture Strategy

Class of 2018のY.Yです。あけましておめでとうございます。

アプリカントの方々はいよいよ大詰めの時期だと思いますが、皆様の努力が最高の結果で報われることを心よりお祈りしております。

さて、私自身がKelleyを選択した時の理由として、Entrepreneurship & Corporate Innovationの分野での強みというものがありました。アントレ・イノベーション系の学びの全体像についてはこちらの記事がよくまとまっており参考になりますが、その中で私は今回W511 Venture Strategyというクラスを選択し、これが非常に良い授業だったので、今回はぜひこの内容についてシェアさせていただきたいと思います。

授業の概要


 この授業は、デザイン思考やリーンスタートアップなど、現在のイノベーションの現場で実践されている理論について、イノベーションの各ステップに沿って横串を通しながら学びつつ、実際に自分自身がそのプロセスを同時並行で実践し、最終的に自分自身が一つのビジネスプランを作り上げていくという、極めて意欲的な授業でした。授業のタイトルはVenture Strategyとなっていますが、必ずしもスタートアップ企業にフォーカスしていたわけではなく、あらゆる組織に活かせる考え方を学ぶことができました。授業と連動しながら進めていく個人プロジェクトでは、7週間という比較的短い期間の中で、実際の顧客の行動を観察・インタビューするフィールド調査をしたり、3分間のビデオプレゼンテーション (Rocket Pitch) をレコーディングスタジオで収録したりするなど、実際のビジネス立ち上げに近い密度の濃い経験ができました。

 教授は非常に熱心かつ授業構成も入念(シラバスだけでびっしりと13ページもありました)で、リーディング、ケース、レクチャーおよびプロジェクトの各段階がうまく統合され、学びが最大化されるようになっていました。しかしながら、ただでさえプロジェクトの負荷が大きい上に、リーディングアサインメントも毎回ビジネス書3〜4冊の該当するチャプター丸ごと(つまり合計100ページ分くらい)を読む必要があったため、ネイティブでもリーディングは諦めている人が多かったです。

 このように負荷の高い授業であったため、 多くの学生が初回の授業でドロップしたり、途中ではあまりにも多くの学生の悲鳴を受けて、リーディングアサインメントが一部オプショナルになったり、授業を一回分休講にしてプロジェクトに当てる時間にするなどの措置が取られていました。個人的には、留学の大きな目的の一つ(派遣元企業における新規ビジネスモデルの検討)を掘り下げるまたとない機会と考え、今回のハーフセメスター(7週間)ではこの授業に100%集中すると決めて全力で臨んだため、GLOBASE(昨年の春休み期間に実施したインドでのプロジェクト)と並んで、最も学びが多く面白い授業となりました。

授業・プロジェクトの流れ 


新規ビジネスモデル構築の流れ

 授業・プロジェクトの全体の流れは上の図の通りで、新規ビジネスモデル構築の流れに沿って進められました。

1. Idea Development


 まず、Idea Developmentとして顧客や組織が抱える課題を特定し、ビジネスのアイデアを検討します。本授業の中では、まず日常に潜む様々な問題点に気づくマインドセットを身につけた上で、具体的には ”Bug list” として潜在的な課題を最低20個リストアップし、そこから今回の「取っ掛かり」となる課題を一つ選び出しました。(これはあくまでも「取っ掛かり」であり、プロジェクトを進める中で当初の仮説が間違っていることが分かったり、顧客の別のニーズが明らかになったりすることにより、ほとんどのケースでは修正または根本的に違うものに変わったりします。)さらに、Design Briefを用いて具体的なプロジェクトのスコープや、今回取り組むことと取り組まないこと、掘り下げるべき疑問点、ターゲット顧客、リサーチプラン、期待すべき成果等を(仮に)設定しつつ、一方でスコープを広げたり狭めたりして異なるビジネスモデルの可能性も探りました。なお、今回私は、派遣元企業における新しいモデルの広告ビジネスを検討することにしました。

2. Research


 次にResearchとして、仮説の検証とさらなるインサイトの発見を行います。具体的には、インターネットや文献によるセカンダリーリサーチと、最も重要なパートとして、サービスを提供する実際の場所(自宅や外出先など)で実際のターゲット顧客の行動観察や、インタビューを行いました。フィールドに出てそこで何が起きているかを直接知る、ということの重要性はある意味では自明なものですが、実際にはビジネスの現場においてもおろそかにされていることが多く、勇気や行動力が要求されるものであるということが授業でも強調されていました。実際、私のプロジェクトでもこのフィールド調査からいくつもの重要なインサイトを得ることができ、直接インサイトを得ることの重要性を体感しました。このことは、この授業で得た最も大きな学びのうちの一つとなりました。

フィールド調査の一コマ(アメリカ人女性に自宅で広告のクーポンをどう扱っているかを見せてもらっているところ)


3. Prototyping


 続いてPrototypingとして、実際にサービスや商品のプロトタイプを試作し、アイデアを具現化する中で曖昧だった点を一つの具体的な形に落とし込んでいきます。さらに試作したプロトタイプをもとにターゲット顧客の反応を観測し、Pivotingつまり改良やアイデアそのものの修正を行います。このステップと、前のResearchのステップと合わせて何度も繰り返しを行うことにより、本当に顧客が受け入れる商品やサービスを生み出すことができます。このプロセスは、リーンスタートアップの核とも言えるMVP(Minimum Viable Product: 前提となる仮説を検証する上で必要な最小限の製品・サービス)の考え方に直結するもので、大きな予算をかけずにMVPを短期間で作り上げ実際に顧客に提供して反応を計測することにより、小さな失敗と学習のサイクルを繰り返して、本当に顧客が求める製品・サービスを作り上げることができるようになります。今回のプロジェクトでは時間的制約もあり、MVPとして実際に顧客に提供する段階までは至りませんでしたが、様々なフィードバックを得ながら、プロトタイプも大きく分けて3段階で進化していきました。

4. Storytelling


 最後のStorytellingでは、この時点までに作り込んだプロトタイプや得た知見をもとに、スポンサー(投資家や経営者など)に対してプレゼンテーションを行います。今回の授業では、Rocket Pitchとして、3分程度のビデオプレゼンテーションをスタジオでレコーディングし、その後授業中にチーム内でお互いにレビューするということを行いました。幸いこの際はチーム内で最も高く評価され、クラス全体に対してプレゼンテーションする機会を得ることもできました。

レコーディングスタジオの様子


 このように、この授業は負荷の高い授業ではありましたが、その分非常に学ぶものも多く、また最終的に派遣元企業に自信を持って提案できるビジネスモデルを構築することができたため、極めて意義深い授業となりました。これからKelleyに入学される方、特にアントレやイノベーションに興味のある方は、ぜひ検討してみてください。

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